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研究テーマ紹介6:光コム光源を用いた分光法

こんにちは。美濃島研究室の足立と申します。

私は第2回目のブログで紹介のあった光コム光源を、分光測定に適用した研究を行っています。


 トマトが赤いのは、赤色の光を反射し、それ以外の色を吸収するためです。トマトの表面で反射した赤色の光が目に入ってくるために、トマトは赤いと認識できるようになります。このような特性はトマトに対していろんな周波数成分を持った光源を当て、反射してくる光量を周波数ごとに分離して測定することによって評価することができます。このように、周波数ごとのモノの特性を分析する技術を分光測定と言います。


 分光測定技術としては様々な方法がありますが、強力な手法の1つとしてフーリエ変換分光法というものがあります。フーリエ変換分光法は、広い周波数の成分を持った光の干渉情報を数学的に解析することによって、周波数ごとにモノの特性を見ることができる方法です。例えば、以下の図のような構成で、フーリエ変換分光法を実現することができます。

この図では、1つの光源から出た光を一度2つに分け、一方の光路に測定したい試料を設置します。この光に、透過した試料の情報を持たせることができます。そして2つの光の波形がどれくらい似ているのかの相関値を測定しながら、少しずつ可動鏡を動かしていくことによって干渉波形を取得することができます。このような測定法は多岐に渡る分野に応用されている反面、鏡の掃引の必要性による測定時間の律速や、測定性能を向上させるためには測定系自体の大型化の必要性がありました。

 上記のような課題を克服できる新しい方法として、2台の光コム光源を用いる「デュアルコム分光法」が現在注目されています。第2回目のブログでもあったように、光コムは超短パルスレーザーであり、その一瞬だけ光るタイミングが極めて等間隔です。デュアルコム分光法はそのような光コムの精密性を最大限に活かした測定手法です。デュアルコム分光法のセットアップを下図に示しています。

 従来のフーリエ変換分光法では鏡を少しずつ動かすことによって2光路に距離差をつけました。これは2つの光路で光るタイミングを少しずつずらしたかったからです。一方で、この測定法ではわずかに光るタイミングの異なる2台の光コム光源を用いることによって、その精密性により移動ステージを用いなくてもこの目的を達成することができます。これによって測定系から可動部を排除でき、測定の高速化や安定化、小型化など様々な面において従来法を凌駕しています。デュアルコム分光測定計は製品化もされており、これから広く使われていくことを期待しています。


 分光技術は物質の評価に欠かせない技術です。このブログを通して、少しでも興味を持っていただけると嬉しい限りです。

最後までありがとうございました!




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