こんにちは。2020年度の書記を務めております、杉本です。
私も川村会長と同じ白川晃研究室に所属しており、そしてやはりハイパワーレーザーに関する研究に従事しています。
他の研究テーマ紹介でも度々登場していますが、レーザーの発振方式にはCW(連続波)とパルスの2種類があります。CWレーザーでは一定のパワーで出力される一方、パルスレーザーではエネルギーが短い時間に集中して出力されます。この瞬間的に高いパワーを出すことのできるパルスレーザーの性質から、金属の非熱加工や粒子加速など産業的にも学術的にも広く応用されています。
私はこのパルスレーザーを光ファイバーで増幅する手法について研究しています。光ファイバーとは、ガラスなどを材料にしたとても細い繊維状の光の導波路です。私の研究のようにレーザーの増幅や発振にも用いられますが、一般的なものでは光回線などの情報通信にも用いられています。
さて、光ファイバーをハイパワーレーザーに用いる場合に重要な特徴について考えます。まず、光ファイバーはその構造から高い冷却性能というハイパワーレーザーに欠かせないアドバンテージを持っていますが、パルスレーザーを苦手としています。先述の通りパルスレーザーではエネルギーが短い時間に集中しています。これを細い光ファイバーへ入れると、エネルギーが時間的にも空間的にもとても狭い領域に閉じ込められていることになります。ピークパワーが高くなりすぎると、光ファイバーにダメージを与えたりSPMや誘導ラマン散乱などの非線形効果につながったりします。
この光ファイバーの不利な点を克服して、高エネルギーファイバーパルス増幅を行う! というのが私の研究テーマです。具体的にはCPAとDPAという2つの手法を用いています。
まずCPAとは、チャープパルス増幅(Chirped pulse amplification)のことです。このCPAは2018年ノーベル物理学賞を受賞したことでも有名です。光ファイバーに入る前にパルスを時間的に引き伸ばすことで先述の問題を抑制することができます(図1)。
図 1. CPAの概念図
一方でDPAとは分割パルス増幅(Divided pulse amplification)のことで、私の研究は主にこのDPAに焦点を当てたものです。この手法では光ファイバーに入る前にパルスを時間的に分割することでピークパワーを下げ、先述の問題を抑制することができます(図2)。
図 2. DPAの概念図
研究テーマ紹介3で紹介されたマルチコアファイバーが空間的にパルスを加算しているのに対して、私の研究のDPAは時間的にパルスを加算していると言えます。どちらもレーザーの干渉性(コヒーレンス)を利用しています。
今回は光ファイバーを用いた高エネルギーパルス増幅について紹介させていただきました。
これをきっかけにさらに興味を持っていただけたら幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!
おまけの小話
本文で述べた通り光ファイバーはとても細く、そこに光を入れるのは難しい。そこで「針の穴を通す」という慣用句の代わりとして「ファイバーに光を入れる」を新しく提案します。
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