こんにちは、電通大の張研究室所属の尾関です。 張研究室では、「限界を超えた新しい不思議な光量子状態の生成および応用」ということで、主に量子光学と言われる分野での研究を行っています。
研究室内でいくつかの研究チームに分かれて研究を行っており、私は「3重OPOを用いた高輝度光子対の生成」というテーマで研究を行っています。
今日は、この研究テーマの背景について簡単にご紹介しようと思います。
量子には私たちが今まで学んできた古典力学からは想像も出来ないような不思議な挙動をします。そのうちの一つが、「量子もつれ (quantum entanglement)」と呼ばれる関係です。(量子とは、粒と波の性質を持つエネルギーの最小単位のこと)量子もつれとは、例えば、AさんとBさんが別々の場所にいたとして、「量子もつれ」と呼ばれる不思議な相関を持った光子のペアがそれぞれAさん、Bさんに送られたとします。Aさんが光子を観測したときにその光子が状態Aであるとわかったとしたら、自動的にBさんの持つ光子も状態Aであるということがわかるような関係を「量子もつれ」と呼んでいます。この性質を利用して様々な応用が期待されていますが、その中の一つが量子暗号通信です。

量子暗号通信とは、通信における暗号鍵を量子の一種である光子ひとつひとつに載せて配送する通信手段のことです。光子には観測すると状態が変化するという性質を持っているため、盗聴が不可能です。これを利用することで絶対的なセキュリティを保証することができます。ちなみにこの量子を用いて鍵配送を行うことを量子鍵配送(Quantum Key Distribution)と言います。このシステムのイメージ図は下図の通りです。

既にこの量子暗号通信は世界各国で盛んに研究されており、特に中国ではすでに金融機関への実装が成功しています。なぜこのように盛んに研究が行われているのかというと、素因数分解を得意とする量子コンピュータの台頭によって、従来のRSA暗号通信方式などが破られるかもしれないという危険性があるためです。
私たちの研究室ではこのような量子通信や量子実験のための高品質な量子光源の開発を行っています。具体的には、量子もつれと呼ばれる関係を持つ光子のペアをSPDC(Spontaneous parametric down-conversion)と呼ばれる非線形光学過程を用いて行っています。(下図は実験のイメージ図です。非線形結晶と呼ばれる結晶に緑色の光を入射すると、赤色の光が出ている様子がわかります。)

電通大では、実は光工学に関する研究も盛んな大学であり、このブログを通してその一端に触れて頂ければ幸いです。
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